隠岐 三郎岩 後鳥羽上皇 

百人一首かるたの歌人エピソード番外編~「承久の乱」で鎌倉幕府軍に敗れた”ラスボス”後鳥羽上皇、謎に包まれたその後を探る!

我こそは 新島守よ(にいじまもり)よ 隠岐の海の 荒き波風 心して吹け

「承久の乱」で鎌倉幕府軍に大敗を喫した、”ラスボス”後鳥羽上皇の、その後の運命やいかに?

百人一首かるたの歌人エピソード、今回は番外編として、承久の乱の首謀者として隠岐に流された後の、後鳥羽上皇のご様子をご紹介いたします。

 

歌川国芳の描いた後鳥羽院(アメリカ議会図書館所蔵・出展:Wikimedia Commons)

 

歴史の解釈に異を唱えてみる!

尼将軍・北条政子の説得によって一致団結し、承久の乱に圧倒的な勝利を収めた鎌倉幕府軍。武家政権は盤石となり、その後明治維新まで、600年を超える武家の世が続くことになります。
一方、敗れた後鳥羽上皇は隠岐に流され、失意の日々を過ごしたまま、京に戻ることもかなわず59歳で亡くなりました。
これが、承久の乱についての一般的な歴史書の記載です。

え?
ちょっと待って!
それでおしまい?

隠岐に流されたとき、後鳥羽上皇は41歳でした。20年近い年月、本当に失意だけの悶々とした日々だったの?と、疑問を持つ方もいらっしゃるのではないかしら?

そう思いまして、少ない資料をひも解いていくと、意外なことがわかってきました!

 

私こそが、島を治める新しい神である。隠岐の海の荒い波や風よ、これからは私の意に逆らうことなく、もっと穏やかに吹くのだぞ。

 
この歌は、後鳥羽上皇が隠岐に流された後に詠まれた歌の中で、最も有名な歌と言われています。
日本海の荒い波風に向かって、「穏やかに吹いてください」と哀願する、深い悲しみを誘う歌というのが、従来の解釈でした。
しかし近年、この歌はもっと力強い歌なのではないかといわれています。

新島守(にいじまもり)は、従来”新しい島の番人”と解釈されていましたが、近年は、”島の新しい守り神”を意味していると捉えています。
すると、”神”が”哀願”するって、ちょっとヘンじゃないですか?
さらに、自分のためだけに願うのも、神らしくありません。
悪天候で舟を出せない島の漁師たちのために、後鳥羽上皇が島の守り神として、波に対して穏やかになれと命じている、と考えるのが自然だ、というわけです。

800年も前のことですので、真相は謎のままです。でも最近の解釈の方が、”ラスボス”にふさわしい気がしませんか?

 

隠岐 荒波 後鳥羽上皇

穏やかになれと日本海の荒波に命令するなんて、さすが”ラスボス”後鳥羽上皇!

 

隠岐での暮らしをできる限り楽しまれた「後鳥羽さん」

隠岐で暮らした約20年の日々、後鳥羽上皇は悲しむばかりではなく、可能な限りエンジョイなさったご様子も伝えられています。
京で親しくしていた藤原家隆らと和歌のやり取りを続けたり、お好きだった刀剣づくりのため、九州から刀匠を呼び寄せたり。
後鳥羽上皇は、自作の刀剣には必ず「菊」の銘をつけていたそうです。これが、天皇家の菊のご紋の由来になったのだとか。

また後鳥羽上皇は、島の人々の生活にも心を寄せていて、島民の暮らしをテーマにした歌も多く残されています。
島民たちは、後鳥羽上皇に喜んでいただこうと、御前で牛を戦わせる競技会を考案しました。今も隠岐で行われている伝統文化「隠岐の牛突(うしづ)き」の始まりと言われています。
今でも隠岐の人々は、後鳥羽上皇への親しみを込めて、「後鳥羽さん」と呼んでいるそうです。

後鳥羽上皇は亡くなられた後、島で火葬されました。その場所は大切に受け継がれ、後鳥羽上皇を祭神とする隠岐神社が創建されました。

 

隠岐神社 後鳥羽上皇

後鳥羽上皇の『御火葬塚』に隣接して創建された隠岐神社(Bakkai at Japanese Wikipedia, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons)

 

※後鳥羽上皇は、隠岐に流される直前に出家なさったので、「後鳥羽法皇」または「後鳥羽院」と表記されることが多いです。私たちのページでは、わかりやすく「後鳥羽上皇」で統一させていただいております。

 
☆こちらの記事では、後鳥羽上皇と良好な関係を築いていた天才歌人、鎌倉右大臣こと源実朝をご紹介しております。


世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも
源実朝。鎌倉幕府・源氏の嫡流最後の将軍にして、”歌聖”と讃えられた万葉歌人・柿本人麻呂の再来とも言われた和歌の天才!

情報源: 百人一首かるたの歌人エピソード第93番~”歌聖”柿本人麻呂の再来!?鎌倉幕府三代将軍、源実朝が夢見たものは ⋆ MUSBIC/ムスビック

 

 

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