百人一首かるたの歌人エピソード番外編~在原業平、桜への想いはかなわぬ恋にも似て
世の中に たえて桜のなかりせば 春の心は のどけからまし
春の訪れを告げる桜の花。
鮮やかに咲き、美しく散るその様は、昔も今も、私たち日本人の心を捉えて離しません。
今回は、百人一首かるたの歌人エピソードの番外編として、桜の美しさ、桜を愛おしく思う気持ちを見事にとらえた、在原業平の歌をご紹介させていただきます。
もしこの世の中に、桜というものがなかったら、私たちは、春をどれだけのどかな気持ちで過ごせたことか
平安時代きってのイケメンでプレイボーイ、多くの女性の心をとらえて離さなかったと言われる在原業平に、こんな切ない歌を作らせてしまった桜の花。桜って本当に罪なヤツですね!
この歌が生まれたいきさつは『伊勢物語』に残されています。
※『伊勢物語』は、平安初期に成立した歌物語です。作者や成立時期はわかっていません。在原業平と思われる人物を主人公として、恋愛や親子の愛、友情、社交生活など、様々な人間関係を描いています。
昔、惟喬(これたか)親王という皇子がいらっしゃいました。
桜が美しい季節のある日、在原業平は惟喬親王のお供の一人として、親王と共に鷹狩りに出かけました。といっても、実際は鷹狩りよりも、お酒を飲みながら和歌を詠むことに熱中していたようです。
みんなで桜の美しい親王の別荘に立ち寄り、桜の木の下で歌を詠むことになりました。
今回ご紹介しております歌は、このときに業平が詠んだものです。春の間、ずっと心を煩わされる桜への愛情を表現していて、男女の仲にもあてはまる、切ない歌です。
同席した人たちから、ため息が聞こえてきそう・・・
ところで、この業平の歌には、素晴らしい返歌が存在します。
惟喬親王のお供の一人が、このように返しました。
散ればこそ いとど桜はめでたけれ 憂き世になにか 久しかるべき
散るからこそ桜は素晴らしいのです。つらいことや嫌なことの多い世の中に、永遠にあってほしいものなど、何がありましょうか。
残念ながら、返歌の作者はわかっていません。
しかし、平安初期を代表する歌人のひとりでもある、在原業平とのやりとりは、1000年もの時を超えて、今を生きる私たちに真実を伝えていたのです!
冬の間、桜が花開くのをずっと待ち望む日々を過ごし、咲いたと思ったら、今度は、いつ散ってしまうのかと、心を悩ませる日々・・・
今年の桜が終わっても、私たちはきっと、来年も再来年も、桜を想い続けるのでしょうね。
✩在原業平といえば「ちはやふる」ですね!こちらの記事も是非ご覧くださいね。
ちはやふる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは
“畳の上の格闘技”、競技かるたブームをもたらした『ちはやふる』のタイトルとなった歌。 主人公の綾瀬千早が、百人一首の中で最も好きな歌が、この歌です。
情報源: 百人一首かるたの歌人エピソード~イケメン在原業平が昔の恋人に捧げた、神々しいまでに美しい風景の歌にこめた思いとは?
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