百人一首かるたの歌人エピソード第64番権中納言定頼~幻想的な光景を歌い上げた、容姿端麗で教養豊かな文化人なのですが・・・
朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに あらわれわたる 瀬々の網代木
旅先で、早朝ふと目を覚まして窓の外を見眺めたら、普段見ることのできない幻想的な光景を目の当たりにして、はっと息をのんだ…
そんなご経験をお持ちの方、多いのではないかしら?
”畳の上の格闘技”、競技かるたに使われる小倉百人一首の歌人エピソード、今回は第64番権中納言定頼(ごんちゅうなごんさだより)をご紹介いたします。早朝の美しい光景を描いた歌、そして6文字目まで聞かないと札を取れない、”6字決まり”の歌です。
教養豊かなイケメン、でもその正体はチャラ男だった!?
権中納言定頼、本名は藤原定頼(ふじわらのさだより)といいます。平安時代中期の公卿で歌人。大納言公任の名前で小倉百人一首に登場する藤原公任〈ふじわらのきんとう〉の長男です。
定頼は、和歌だけでなく管絃、読経にも秀で、書家としての名声も高く、しかもイケメンでプレイボーイ!相模、大弐三位など、小倉百人一首に登場する多くの女性と浮名を流しています。ちょっとからかったら手痛いしっぺ返しを食らわされた、あの小式部内侍とも噂があったようです。
若い頃の定頼は、少々軽薄な性格だったようで、宮中で暴力事件に巻き込まれたり、偉い人を怒らせて謹慎させられたりと、何かと騒ぎを起こしています。
夜明け方、たちこめていた宇治川の霧がとぎれとぎれになって、川瀬に打ち込まれている網代木が現れてきました。
網代木(あじろぎ)とは、冬にアユの稚魚を取る、網代と呼ばれる仕掛けを止めた杭のことです。網代木は、平安時代、冬の宇治川の風物詩でした。
京都の南を流れる宇治川は、平安貴族の別荘が並び立つリゾート地でした。
宇治川の川霧は、「源氏物語」の「宇治十帖」によって、平安貴族の間で有名になりました。定頼が描いた幻想的な光景は、和歌にもよく登場する人気コンテンツだったようです。
ヤマ勘で勝負の”大山札”
「朝ぼらけ」で始まる歌は2首あります。6文字目まで聞かないと、どの歌か特定できない”6字決まり”の歌です。
・朝ぼらけ 宇治の川霧 絶え絶えに あらわれわたる 瀬々の網代木(第64番権中納言定頼)
・朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 触れる白雪(第31番坂上是則)
競技かるたの試合中、6文字目まで待ちきれずに、ヤマ勘で札を取った人が多かったのでしょうか?6字決まりの歌は”大山札”と呼ばれます。歌に描かれた美しい風景とはうらはらに、緊迫した勝負の中でもひときわ手に汗を握る瞬間ですね!
※定頼の偉大な父・藤原公任や、6字決まりのパートナー・坂上是則につきましては、また別の機会にご紹介いたしますね。
☆こちらの記事は、定頼に”返しの一撃”を披露した小式部内侍をご紹介しています。
大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天の橋立
幼い頃から母・和泉式部とともに宮中に仕え、母に勝るとも劣らない豊かな才能のために、母親による代作疑惑をかけられた美少女、小式部内侍(こしきぶのないし)。ユーモアのセンスあふれる見事な返しの一撃をご紹介いたします。
情報源: 百人一首かるたの歌人エピソード第60番小式部内侍~ユーモアのセンスあふれる美少女、歌の才能とモテ女っぷりは母親譲り! ⋆ MUSBIC/ムスビック
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