百人一首かるたの歌人エピソード第87番寂蓮法師~激しい戦いを呼ぶ一字決まりの歌が描いた幻想的な情景
むらさめの 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕暮
最初の音が聞こえた瞬間、パシッと鋭い音とともに札が飛ぶ、”畳の上の格闘技” 競技かるた。
百人一首かるたの歌人エピソード、今回は第87番寂蓮法師の登場です。一字決まりと言われる、激しい戦いを呼ぶ歌として有名で、なかなかゆっくり鑑賞する機会がないのですが、とても幻想的な情景を描いた歌です。
一字決まりの歌、覚え方は「むきー!」?
シーンと静まりかえった会場。読手が「む」と読み始めた瞬間、「き」の札が宙を舞う!
競技かるたで見られる象徴的なシーンですね。”畳の上の格闘技”と呼ばれる所以でもあります。
小倉百人一首には、最初の一文字が他の札とは被らない、一字決まりの歌が7首あります。「むすめふさほせ」というのがその覚え方。「むすめふさほせ」のトップバッターのこの歌、「むきー!」と覚える方も多いそうですよ。
にわか雨が通り過ぎた後、まだそのしずくもかわいていない杉やヒノキの葉から、霧が白く湧き上がっている、秋の夕暮れの何という光景よ
四季に恵まれ、雨の多い日本。日本人は、雨を表す詩的な表現を使うことで、雨の日の憂鬱な気持ちを克服し、雨を楽しんできたようです。
雨を表す様々な表現は、それぞれ微妙な意味の違いがあります。
たとえば、秋霖(しゅうりん)は、初秋にしとしと降り続く雨。秋時雨(あきしぐれ)は、晩秋から冬にかけて、急に降ったりやんだりする雨。今回の歌に登場する村雨(むらさめ)は、本来夏のにわか雨を意味しますが、下の句で「秋の夕暮れ」と歌っていることから、秋のにわか雨だとわかります。
寂蓮が描いたのは、まるで夏の夕立のようなにわか雨がやんだ後の、秋の夕暮れの光景です。常緑樹の鮮やかなはずの色彩が、白い霧に覆われた、はっとする瞬間を切り取った、幻想的で美しい風景だったのですね!
寂蓮法師(1139~1202)のこと
寂蓮法師は、出家する前の名前は藤原定長といいます。平安時代を通して、宮廷の中心的存在だった藤原家のメンバーで、小倉百人一首の選者・藤原定家のいとこにあたります。寂蓮は、叔父である藤原俊成の養子となりましたが、俊成に嫡男・定家が誕生したこともあり、30歳の頃に出家。政治的な場からは一歩引き、その後は歌の世界に精進しました。
寂蓮の様々な才能は、あの後鳥羽上皇が絶賛!鎌倉時代の随筆家で『方丈記』の著者として有名な鴨長明も、寂蓮の歌の才能とともに人間性も高く評価しています。
☆こちらの記事は、「むすめふさほせ」のしんがり「せ」、崇徳院がお詠みになった歌をご紹介しております。
え?怨霊に守護神って???
瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末に あはむとぞ思ふ天皇なのに、史上最強の怨霊とか、最強の守護神とか・・・!?何事かと思ってしまいますね!
情報源: 百人一首かるたの歌人エピソード第77番~史上最凶の怨霊から最強の守護神になった、崇徳院のお話 ⋆ MUSBIC/ムスビック
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