心が落ち着く芳香で世界的に有名な香木、ビャクダン(白檀)がハワイに自生していたことをご存知ですか？
かつて、ビャクダンはハワイ王朝を支える貴重な資源でした。乱獲のため、一度は滅びたと思われたハワイのビャクダンが、今、静かに復活しようとしています。
今回は、ハワイ固有のビャクダン【イリアヒ(Iliahi)】をご紹介させていただきます。
マウイ島ハレアカラだけに自生するイリアヒ・ハレアカラエ(Photo by Forest & Kim Starr)
ビャクダンは、インド原産の熱帯性常緑樹です。サンスクリット語で「チャンダナ」と言います。「樹木」「芳香」といった意味だそうです。
ビャクダンの香りは、仏教と深い関わりがあります。お線香の香りの中で、最も一般的なのがビャクダンなんですよ！
ビャクダンから採れる精油は、香水のラストノートとしても広く使われています。ビャクダンの精油は、香料として使われるときは、英名のサンダルウッド(sandalwood)と表記されることが多いようです。
※香水のラストノートのお話は、こちらの記事をご覧くださいね。
ビャクダンのハワイ名は「イリアヒ」といいます。
ハワイには、４種類のイリアヒがあると言われ、そのうち3種類がハワイ固有種「エンデミック」に指定されています。
ハワイのイリアヒ貿易は、18世紀、外国船がひんぱんに来航するようになった頃にスタートしました。
インド産のビャクダンが、インドや中国で家具や仏像の原木として、また香料として珍重されていたため、ハワイのイリアヒも、高値で取引されるようになりました。
これに着目したのが、ハワイ諸島を統一したカメハメハ大王です。イリアヒ貿易は、王朝の独占事業として、政権の基盤となりました。
ハワイ諸島を統一したカメハメハ大王(出展：Wikimedia Commons)
イリアヒの伐採には、過酷なノルマが課せられ、人々は作業にかかりきりとなったそうです。農作業を行う時間がなくなり、畑は荒れ、飢餓が起きたほどだったとか。
カメハメハ大王の死後、膨れ上がる王国の予算を賄うため、イリアヒの伐採は加速し続け、資源はあっという間に枯渇。イリアヒ貿易は終焉を迎えました。19世紀前半のことです。ハワイのイリアヒは、全滅したと考えられていました。
カホオラヴェ島で栽培されているイリアヒアロ・エ(Photo by Forest & Kim Starr)
今、イリアヒは少しずつ、復活の兆しを見せています。
現在は、植林と自然に復活してきた木があります。
まだまだイリアヒの生育環境は厳しいため、イリアヒは絶滅危惧種に指定されて、厳重に管理されています。
イリアヒを植えるとき、隣にはコアを植えるそうです。
イリアヒの香り成分が、コアを虫の害から守り、コアが生成する窒素養分がイリアヒの生長を助けています。
ハワイの伝統文化を支えてきた樹木が互いに助け合い、復活を目指しているのですね！
ハワイ島に生息するイリアヒ・パニクラトゥム(Photo by Forest & Kim Starr)
いつの日か、ハワイの自然が復活するまで、私たちもそっと見守っていきたいものです。
☆こちらの記事では、ハワイ固有植物・コア(Koa)をご紹介しております。
コア(koa)という木をご存じですか？コアは、ハワイ語で「勇気」「戦士」という意味を持ち、マナ(精霊)の宿る神聖な木材として、古くからハワイの人々に大切にされてきた樹木です。今でも、高級なウクレレや木工芸品の素材として大人気です。
情報源: ハワイ固有植物コア(Koa)～ハワイの伝統文化を支えてきた静かなる戦士
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